のんたん日記 １
１１．おんせん だいすき！
１２月２８日に、やっと1999年の仕事納めも終わりました。保育園も、明日からお休みです。早速、おとうさんとおかあさんの行動開始です。２９日から一泊の予定で、蓼科のホテルを予約してあるのです。
のんたんもあみちゃんも、そんなことは知らされていなかったのですが、おとうさんとおかあさんは、この日をとても楽しみにしていました。なにしろ、温泉です。おいしいものをいっぱい食べて、ゆっくりしよう！と張り切って出発しました。
今年の蓼科はとても暖かいそうで、雪もほとんどなく、渋滞もまったくない中、午後には、無事、蓼科に到着しました。
着いてみると、予約していたホテルは、超豪華なつくりです。通された部屋には、８畳の和室がふたつもついていました。いつもビンボー旅行のおとうさんとおかあさんが、奮発したわけではありません。これで一泊二食つき、一家で泊まって１６０００円という安さなのです。このホテルが、インターネット予約システムを導入したキャンペーン企画に、おかあさんが応募し、特別料金で宿泊できた、というわけです。
早速、夕食前に、おふろに入ることにしました。客室内にもおふろはあるのですが、せっかく温泉に来たのだから、と大浴場へ。おとうさんっこのあみちゃんは、おとうさんといっしょに男湯にはいることにしました。
のんたんは、おかあさんに連れられ、女湯に。脱衣場にはいるなり、不思議な雰囲気を感じ取ったのんたん。そわそわと落ち着かないようすです。「おふろにいこう、といわれて来たけど、ここはいつもとちがうぞ。」と思っていたのでしょう。広い脱衣場を探索しようとするのをなんとかおさえて、洋服を脱がせました。このごろは、トレーナーもズボンも、少しずつ自分で脱げるようになってきたのんたんです。やっとのんたんをハダカにし、そのまま歩いていこうとするのを片手でおさえて、おかあさんもすばやく服を脱ぎました。
いよいよ温泉にはいります。のんたんは、もうわくわくしています。ふたりでお湯を浴びて、浴槽の中へ。そのまま、おかあさんにしがみついて様子をうかがうかな、と思いきや、とたんに探索開始となりました。
浴槽はとても広くて、プールのようです。のんたんにとっては、温水プールに来たのと同じだったのでしょう。おかあさんの手をふりきり、浴槽内のお湯をかきわけかきわけ、どんどん歩いていくのです。それはいいのですが、温泉でゆっくりしている他のお客さんに、がんがんぶつかります。ぶつかるだけでなく、その人に抱きついたりします。
おかあさんは、もうはらはらしながらのんたんの後をついて歩き、「すいません、すいません。」と謝ってまわりました。でも、どの方も、みんな「あらあら」とにこにこしています。「いいわねえ。いくつ？ このくらいが一番かわいいのよね。うちはもう、にくらしくて・・・」などと言われて、ほっとするおかあさんです。
浴槽内をひとしきり歩くと、今度は洗面器を持ってバシャバシャ。もうすこし静かにしてくれえ・・・と思いながら、ふと壁を見ると、「このドアの向こうが露天風呂です」と書いてあります。
露天風呂には、おかあさんもはいったことがありません。早速、のんたんを抱いて行ってみることにしました。
ドアの向こうは、もちろん野外です。あたたまった体には、外の冷気もここちよく感じます。のんたんを抱いたまま、思いきってドブン、と露天風呂にはいりました。
のんたんは、おかあさんに手を引かれて、ごつごつした岩の床をそろそろと歩きました。
一番へりの岩のところまで来て、どうするのかな、と見ていると、なんと、のんたんはその岩を登り始めるではありませんか！ おいおい、のんたん、その岩の向こうは、崖だよ〜…と引き離したのですが、もちろん、のんたんはあきらめません。
しかたなく、元の大浴場に戻ることにしました。やれやれ、ゆっくり露天風呂につかることもできません。
大浴場に戻り、今度はのんたんの体を洗いました。いつもなら、おかあさんに抱かれてじっとしているのに、今日はすんなりと洗わせてくれません。あっちへ手をだし、こっちへ足を伸ばし、体全体で温泉を感じようと一生懸命。そのうち、お風呂イスを車がわりに押して、浴室内を走ろうとします。のんたん、じっとしてよお…
やっとの思いでのんたんのシャンプーを終えると、おかあさんはぐったりしてしまいました。さあ、もう出ようね、と脱衣場に連れて行きます。ここでもまた、脱衣カゴをひっくり返して遊ぼうとするのんたん。それでもなんとか服を着せ、ほっ。あーそうだ、自分を洗っていなかった、と気がついたのですが、もうどうでもいいや、と思うおかあさんでした。
これまで、温泉には何度か連れていったのですが、のんたんが今回ほど喜んだことはありませんでした。広いおふろをプールがわりに、いっぱいいっぱい楽しんだようです。今度は、ジャングル風呂に連れていってやろうかなあ、などと思う、おかあさんでした。
それにしても、あー、つかれた…。
（おわり）
