のんたん日記 ４
９．くだもの だいすき！
９．７ ブドー！！ （2002年 7月10日）
９．８ ぶどうの皮 （2002年 7月15日）
ブドー！！
さくらんぼの季節が終わるとまもなく、のんたんの家に毎週宅配されてくる無農薬野菜の箱に、別のくだものがはいってくるようになりました。それは、「ぶどう」です。
さくらんぼと同じく、ぶどうにもタネがあります。それに、ぶどうは皮も食べません。口から出さなければならないものがいっぱいですが、おかあさんは、もう気にしませんでした。
「タネだって皮だって、ムリに出さなければならないものじゃないから。大体､ワインなんて、タネも皮も全部いっしょくたにして作ってるんだから、生食でまるごと食べたっていいよね。」
ってなもんです。
そんなおかあさんも、はじめのうちは皮をむいてのんたんに食べさせていたのですが、のんたんはぶどうがことのほか気に入ったようで、どんどん食べてしまいます。だんだんめんどうくさくなってきて、
「もう、まるごと食べちゃいなさい。」
とぶどうの粒をそのままのんたんの手に握らせるようになりました。
のんたんはそれを口の中に入れると、迷わずもぐもぐし、ごっくん、と全部食べてしまいます。どこまで食べても終わりがないくらい、ぶどうを食べつづけるのんたん。初めてそれを口に入れたとき、のんたんはその味がとても気に入ったようで、すぐにおかあさんに名前を尋ねてきました。
「ぶどう、よ。」
とおかあさんが答えると、のんたんは、
「ブドー！！」
と元気な声で繰り返しました。
のんたんは、次の日の晩ごはんのあとでまたぶどうが食べられるだろうと考え、きっと楽しみにしていたのでしょう。翌日の晩ごはんの途中で、なんと自分から
「ブドー！！」
と言って、ぶどうをリクエストしました。
学校の給食でも、おちゃめぶりを発揮したようです。その頃の連絡帳に、Ｕ先生がこんなふうに書いてくださっています。
「今日の給食にぶどうが出たのですが、のんたんはとても気に入ったようで、ぱくぱくと全部食べてしまいました。『もっと！ もっと！』と言うので、『ぶどうはもうオシマイよ。』と言うと、『ブドー！！ あああああ゛〜』とすねていました（笑）。」
給食の時間の楽しそうなようすが伝わってくるようですね。
（次回につづく）
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ぶどうの皮
ぶどうを毎晩ぱくぱくと食べていたのんたんですが、ある日のこと、なんとなくその食べ方がぐずぐずしています。不思議に思ったおかあさんは、
「のんたん、どうしたの？ ぶどう、もういらないの？」
ときいてみました。けれど、のんたんはなにも答えません。
「のんたん、あーんしてごらん？」
おかあさんに言われて、「あーっ」と言いながら開けたのんたんの口の中をのぞいて、おかあさんは大笑いしてしまいました。のんたんの口の中には、ぶどうの皮ばかりがかたまりになっていたのです。
おいしいぶどうの実を食べたあと、口の中に残った皮は食べづらかったのでしょう。けれどのんたんは、それをどうしていいかわからず、もてあましたぶどうの皮を、口の中でかたまりにしていたようなのです。
「あはは。のんたん、ぶどうの皮を食べたくなかったのね。いいよ、食べなくて。これは出していいんだよ。」
おかあさんがのんたんの口にそっと指を入れると…。それを取ってほしかったのでしょう。のんたんもじっとしています。そこでおかあさんは、のんたんの口の中に残っていたそのかたまりを取り出しました。
「皮と、それにタネもまじってるね。のんたん、タネも、食べなくていいんだよ。口から出していいんだよ。これからは、皮はだしてね。ぶどう、もっと食べる？」
「モットタベル！」
口の中のじゃまものを取ってもらってすっきりしたのでしょう。のんたんは、またもぱくぱくとぶどうを食べ始めました。そこで、おかあさんはのんたんに話しかけてみました。
「のんたん、皮だして。」
するとのんたんは、口をあーんとあけました。その口の中をのぞくと、かわいらしい小さな舌の先には、ぶどうの皮が残っています。のんたんは、おかあさんの言うことがわかったのです。やった〜と喜びながら、おかあさんはのんたんの口の中から皮を取り出しました。
それからと言うもの、のんたんは、「ぶどうの皮は食べなくてもよい」ということを理解したようで、おかあさんに、
「皮だしてごらん。」
と言われると、あーんと口をあけるようになりました。そして、口の中でくちゃくちゃになっている皮をおかあさんにとってもらうのをじっと待っているのです。
「よかったよね。ぶどうの皮は食べなくてすむようになったのだから、進歩、進歩。」
とおかあさん。
こうして、さくらんぼやぶどうのおいしさを知ったのんたんは、晩ごはんのあとのくだものを楽しみにするようになりました。毎日、ごはんが終わりかけると、のんたんははっきりとした発音で、
「ブドーッ！ ブドータベル！」
と催促するようになったのです。それを聞くたびに、ついついうれしくなってしまうおかあさんなのです。
自分の食べたいものを、自分のことばで伝えられる。のんたんの欲しいものを、わかってあげられるうれしさ…。ぶどうの粒のひとつひとつに、おかあさんの喜びがつまっているようです。
（おわり）
９．７ ブドー！！ （2002年 7月10日）
９．８ ぶどうの皮 （2002年 7月15日）
ブドー！！
さくらんぼの季節が終わるとまもなく、のんたんの家に毎週宅配されてくる無農薬野菜の箱に、別のくだものがはいってくるようになりました。それは、「ぶどう」です。
さくらんぼと同じく、ぶどうにもタネがあります。それに、ぶどうは皮も食べません。口から出さなければならないものがいっぱいですが、おかあさんは、もう気にしませんでした。
「タネだって皮だって、ムリに出さなければならないものじゃないから。大体､ワインなんて、タネも皮も全部いっしょくたにして作ってるんだから、生食でまるごと食べたっていいよね。」
ってなもんです。
そんなおかあさんも、はじめのうちは皮をむいてのんたんに食べさせていたのですが、のんたんはぶどうがことのほか気に入ったようで、どんどん食べてしまいます。だんだんめんどうくさくなってきて、
「もう、まるごと食べちゃいなさい。」
とぶどうの粒をそのままのんたんの手に握らせるようになりました。
のんたんはそれを口の中に入れると、迷わずもぐもぐし、ごっくん、と全部食べてしまいます。どこまで食べても終わりがないくらい、ぶどうを食べつづけるのんたん。初めてそれを口に入れたとき、のんたんはその味がとても気に入ったようで、すぐにおかあさんに名前を尋ねてきました。
「ぶどう、よ。」
とおかあさんが答えると、のんたんは、
「ブドー！！」
と元気な声で繰り返しました。
のんたんは、次の日の晩ごはんのあとでまたぶどうが食べられるだろうと考え、きっと楽しみにしていたのでしょう。翌日の晩ごはんの途中で、なんと自分から
「ブドー！！」
と言って、ぶどうをリクエストしました。
学校の給食でも、おちゃめぶりを発揮したようです。その頃の連絡帳に、Ｕ先生がこんなふうに書いてくださっています。
「今日の給食にぶどうが出たのですが、のんたんはとても気に入ったようで、ぱくぱくと全部食べてしまいました。『もっと！ もっと！』と言うので、『ぶどうはもうオシマイよ。』と言うと、『ブドー！！ あああああ゛〜』とすねていました（笑）。」
給食の時間の楽しそうなようすが伝わってくるようですね。
（次回につづく）
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ぶどうの皮
ぶどうを毎晩ぱくぱくと食べていたのんたんですが、ある日のこと、なんとなくその食べ方がぐずぐずしています。不思議に思ったおかあさんは、
「のんたん、どうしたの？ ぶどう、もういらないの？」
ときいてみました。けれど、のんたんはなにも答えません。
「のんたん、あーんしてごらん？」
おかあさんに言われて、「あーっ」と言いながら開けたのんたんの口の中をのぞいて、おかあさんは大笑いしてしまいました。のんたんの口の中には、ぶどうの皮ばかりがかたまりになっていたのです。
おいしいぶどうの実を食べたあと、口の中に残った皮は食べづらかったのでしょう。けれどのんたんは、それをどうしていいかわからず、もてあましたぶどうの皮を、口の中でかたまりにしていたようなのです。
「あはは。のんたん、ぶどうの皮を食べたくなかったのね。いいよ、食べなくて。これは出していいんだよ。」
おかあさんがのんたんの口にそっと指を入れると…。それを取ってほしかったのでしょう。のんたんもじっとしています。そこでおかあさんは、のんたんの口の中に残っていたそのかたまりを取り出しました。
「皮と、それにタネもまじってるね。のんたん、タネも、食べなくていいんだよ。口から出していいんだよ。これからは、皮はだしてね。ぶどう、もっと食べる？」
「モットタベル！」
口の中のじゃまものを取ってもらってすっきりしたのでしょう。のんたんは、またもぱくぱくとぶどうを食べ始めました。そこで、おかあさんはのんたんに話しかけてみました。
「のんたん、皮だして。」
するとのんたんは、口をあーんとあけました。その口の中をのぞくと、かわいらしい小さな舌の先には、ぶどうの皮が残っています。のんたんは、おかあさんの言うことがわかったのです。やった〜と喜びながら、おかあさんはのんたんの口の中から皮を取り出しました。
それからと言うもの、のんたんは、「ぶどうの皮は食べなくてもよい」ということを理解したようで、おかあさんに、
「皮だしてごらん。」
と言われると、あーんと口をあけるようになりました。そして、口の中でくちゃくちゃになっている皮をおかあさんにとってもらうのをじっと待っているのです。
「よかったよね。ぶどうの皮は食べなくてすむようになったのだから、進歩、進歩。」
とおかあさん。
こうして、さくらんぼやぶどうのおいしさを知ったのんたんは、晩ごはんのあとのくだものを楽しみにするようになりました。毎日、ごはんが終わりかけると、のんたんははっきりとした発音で、
「ブドーッ！ ブドータベル！」
と催促するようになったのです。それを聞くたびに、ついついうれしくなってしまうおかあさんなのです。
自分の食べたいものを、自分のことばで伝えられる。のんたんの欲しいものを、わかってあげられるうれしさ…。ぶどうの粒のひとつひとつに、おかあさんの喜びがつまっているようです。
（おわり）
