のんたん日記 ４
１０．のんたんの帽子
１０．７ アキコさんからのメール （2002年 9月29日）
１０．８ トミヨシさんからのメール （2002年10月13日）
アキコさんからのメール
ミッションＮＯＰ（のんたんおでかけプロジェクト）をやっていただいた夜、アキコさんからいただいたメールです。
【９月２９日】
こんばんは、アキコです。
今日は、のんたんのお相手をさせていただき、ありがとうございました。
今日のようすを一応ご報告しておきますね。
お母さんが行ってしまった後、
のんたんはジュースを飲むのを止めてベンチから立ち上がり、あたりを手探りで探し回り、
"本当にいなくなってしまったんだ" とわかった瞬間、寝転がって泣き出してしまいました。
起こすと、今度は柱に頭をがんがんぶつけようとし、全身で抵抗していました。
慌てて頭を抑え、抱きかかえてベンチに座り、
ジュースを飲ませたり、「さあ、電車に乗ろうねー」と声かけをしたりして、
なんとかあの手この手でなだめすかしていたのですが、
ようやく電車が来て、いざ乗ろうとしたら、
電車はなぜかとても込んでいて、座れそうになかったので見送りました。
のんたんは電車が来る音を聞いて、しばらくぴたっと泣き止み、じっと聞き入っていましたが、
電車が行ってしまうと "電車が来たのになぜ乗らないんだ？" とばかりに、
また火がついたように泣き出してしまいました。
次の電車がなかなか来なくて、その間、ずっと泣き通して、なんだか申し訳なかったです。
やっと次の電車が来て、後ろから２両目の長いイスの端っこがちょうど空いていたので、
そこに落ち着きました。
自分でさっさと靴を脱ぎ、リュックを下ろし、
はじめはイスの上に立って、窓にぺたっと張りついて音を楽しんでいたのですが、
そのうち、イスの端の３０センチくらいの棚（消火器が入っているところ）に気付き、
「階段！」と言ってそこに上り、
網棚の鉄棒に手を伸ばし、鉄棒のようにぶらさがってにこにこ顔。
途中からは、「タラララ〜♪」と聖者の行進を歌ったりして、
さっきまで泣いていたのが嘘のように、すっかりご機嫌になりました。
ぶら下がった瞬間、
「いーち、にーい、さーん・・・」
と数えてあげると、５数えたところで、
「タン！」
と言ってイスの上に降りては、
「もう１回！」
と言い、しばらく繰り返していました。
終点の上野に着き、
「のんたん、着いたよー。電車、降りようか」
と声をかけたのですが、
まだ降りたくなかったようで、ずっと鉄棒にぶら下がったりしていました。
車掌さんに聞いたら、また折り返して千葉方面に行くと言うので、
そのまま乗り続けました。
ちょうど上野に着いたところでやっとトミヨシくんと連絡が取れ、合流できました。
東中山で急行待ちのため、しばらく停車していたので、
「のんたん、降りようか？」
と声をかけると、素直に靴を履き始めたので、そこで降りました。
ところが、私も注意が足らず、片方の靴がきちんと履けていなかったことに気付かず、
降りるときに、右の靴がホームと電車の隙間から線路に落ちてしまいました。
のんたんは靴がなくなったことにすぐに気付き、ホームのベンチに座らせると、
靴がなくなった方の右足を叩いて、
「くつ〜！」
と訴えていました。
電車が行った後、駅員さんに靴を取ってもらい、それを履くと安心したようでした。
反対側のホームにうつるため、
「さあ、のんたん、階段昇るよー」
と声をかけると、泣き疲れたのか、
「抱っこ！」
と言って抱きついてきました。
「甘えんぼさん！」
と言うと、にやっと笑っていました。
とりあえず上りだけ抱っこして、
下りのときに「のんたん、階段降りようね」と下ろすと、
ぐずることはなく、素直に手すりにつかまりながら、
すたすたと降りてくれました。
すぐに上野行きの各停が来たので、それに乗りました。
上野でランチをして帰ってくるには時間が中途半端だったので、
堀切菖蒲園より手前で下車してご飯を食べるのがちょうどよいのかなーとも思ったのですが、
とても気持ち良さそうに電車にゆられているのんたんを見ると、
それも忍びなく思え、リュックに入っていたバナナを出して、
「のんたん、バナナ食べる？」
と聞くと、
「バナナ、食べる！」
と遊ぶのをやめ、イスにきちんと座ったので、バナナを食べてもらいました。
一口食べては遊び、また気がつくとちょこんと座って、
「バナナ、食べる！」
と言うのが、とてもかわいかったです。
バナナを食べると、満足したのかイスに横になり、
しばらくは首を振って電車の音を楽しんでいたようですが、
そのうち動かなくなってきたと思ったら、すやすやと寝息が・・・(笑)
たぶん、電車に乗るまでの約１５分間、私と格闘して泣き疲れたのだと思います。
じゃあ、このまま、また折り返して堀切菖蒲園に戻ろうか・・・と思っていたら、
上野に着く直前で目を覚ましたので、
「のんたん、もうすぐ着くよ。降りるよー。 靴、履いて」
と声をかけると、体を起こし、座って靴を履いたので、上野で降りました。
駅を出るとすぐにマックを見つけたので、そこを目指して歩きました。
トミヨシくんに注文の列に並んでもらい、先に３階に行ってソファの席に座りました。
パンケーキが来るまでの間、飽きてしまうと思い、
リュックの中にあったもう１本のジュースを出して、
「ジュース、飲む？」
と聞くと、
「ジュース、飲む！」
と言い、ストローを差す間ももどかしいと言った様子で、
私の手からジュースを奪い取るようにし、
ごくごくごくっと一気に飲んでしまいました。
よほど喉が渇いていたようです。
ジュースを飲んで少し満足したのか、
その後、注文の品が届くまでおとなしく座って待っていてくれました。
電車の中でバナナを食べたので、どうかな？と思ったのですが、
パンケーキを見事にたいらげ、オレンジジュースも飲み干してしまいました。
帰り際、マックのお姉さんが紙の帽子を持ってきてくれました。
"あー、のんたん、かぶりものキライなんだよなー。絶対、かぶらないだろうなー"
と思いつつ、試しに頭の上に乗せてみると、きょとんとしながらも両手で触って 、
"なんだー？ これは・・・"
としばらく観察していましたが、
気に入ったのかにこっとして、そのままかぶっていました。
おまけに、駅まで歩く間、帽子が頭から落ちないように、
私とつないだほうの手と反対の手で一生懸命押さえているではありませんか！！
事前に「のんたんメモ」を読んでしっかり予習してきたトミヨシくんも、
「あれ？ のんたんて、身につけるもの苦手なんじゃなかったっけ？」
とびっくり！
その姿を見て、なんだか私もうれしくなりました。
心なしか、その帽子のおかげで、帰りは足取りも軽く感じられました。
ときどき、
「のんたん、帽子かっこいいねー」
と言うと、にこっと笑っていました。
電車に乗ると、靴やリュック同様、その帽子も脱ぎ捨ててしまったのですが、
堀切菖蒲園で降りるとき、リュックを背負わせ、帽子を頭にかぶせると、
これまた片手で落ちないように押さえていたので、
よほど気に入ったのだと思いました。
朝、電車に乗るまではちょっとたいへんでしたが、
その後はとても楽しく過ごさせていただきました。ありがとうございます。
トミヨシくんも、今日は、会った瞬間、
「とーたんかなー？」
としばらく腕を触ったりにおいをかいだりして、のんたんがまとわりついてくれたので(笑)
うれしかったようです。
「のんたんて、美男子だよね！」などと言っていました。
長くなってしまいましたが、こんな一日でした。
次回は、最初からご機嫌で一緒に電車に乗れることを目標にしたいと思います。
では・・・
アキコさんからの詳細なレポートは、とてもうれしいものでしたが、その内容を見て、おかあさんは息を のむほどびっくりしました。
実は、おかあさんは、のんたんがこんなにも泣くところをあまり見たことがないのです。おかあさんの前では、 のんたんはいつもゴキゲンですし、ましてや、「火がついたように 泣いた」なんて、想像もつかないことでした（ちょっと見てみたい気もしますが…）。
こんなにも大泣きするほどのんたんにはつらいことだったのだと思うと、かわいそうな気 がしないでもありませんが、といって、いつも親ばかりが連れて歩く のがよいともおかあさんには思えません。
もしもアキコさんがつれだしてくださらなかったら、きっと、「帽子ののんたん」 も見られなかったことでしょう。 「親以外の方が遊んでくださることに、意味があるのだ。」と、おかあさんはそのときに思いました。
のんたんもいっしょに運動会に連れて行こうかどうかとぎりぎりまで迷った末の決断でしたが、 「やっぱりお願いしてよかったのだ。」とおかあさんは心からそう思いました。 おかあさんがアキコさんにお礼のメールを書いたところ、再び、アキコさんから、「追伸」のメールが届きました。そこには こう書いてありました。
【追伸】
もうひとつ、言い忘れていたことがありました。
堀切菖蒲園の駅でおかあさんとお別れしてから、のんたんがずっと泣いていたときのことです。
のんたんは、もらったジュースを少し飲んでは泣き、また少し飲んで泣き…、というのをしばらく繰り返したの ですが、そのとき、口から離したジュースを、必ず、私に手渡してから泣き始めるのです。
のんたんは、 おかあさんとお別れしてきっと悲しくてたまらなかったのでしょうが、でもあんなに大泣きしているときでも、けっして、ジュースのパクを 投げ捨てるようなことはしませんでした。
必ず、私の手を探し、私の手にジュースを手渡してから泣くのです。のんたん、えらいなあって思いました。
ほんとうに、ずいぶん成長しましたね。
（次回につづく）
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トミヨシさんからのメール
トミヨシさんとは、このときの「ミッションＮＯＰ」がはじめての出会いでした。
これを機に、今後ものんたんの遊び相手をお願いできないでしょうか、というおかあさんのお願いに対して、 トミヨシさんがくださったメールです。
こんなおにいさんと出会えたことの幸運を思わずにはいられないような、あたたかいメールです。
【１０月１３日】
初めまして、トミヨシです。
先月、アキコさんと一緒に、のんたんと遊ばせていただきました。
色々とお気遣いいただき、ありがとうございました。
さて。
のんたんとの今後のお付き合いに関してなのですが、
できる範囲でお手伝いさせていただければと思います。
ただ、色んな点に不安が残っているので、
当分は慣れた方と一緒にさせていただければ、と思っています。
しばらく悩みました。それはやはり不安があったからです。
成人の盲ろうの方との関わりはこれまでにもありましたが、
今回のんたんと一日接していて、
「子供との付き合い方」「コミュニケーションの不安」「安全への不安」
などに戸惑いました。
子供と接することさえ慣れてない僕が、今後どうお付き合いできるのか…。
ですが、電車で吊り輪を見つけたときの、のんたんのにやりとした表情や、
電車から降りるときの寂しそうな顔、
帽子をひしっと抱えて放さない満足げな顔などを見ていると、
何故か僕までニコニコしてしまうんですね。
戸惑うことも多いだろうけど、もう少しのんたんを見ていたいな。
毎日新しい発見をして、遊びを覚えて、いろんな人と話をして…。
そうやって成長していくのんたんの手助けをしてみたいな、と思いました。
今後どのような形でお付き合いできるかわかりませんが、
必要なときは声をかけていただければ嬉しいです。
アキコさんとトミヨシさん。このおふたりに囲まれて、のんたんはきっと楽しい一日を過ごしたことでしょう。
おかあさんがさらにうれしかったのは、アキコさんとトミヨシさんにとっても、思い出深い、楽しい一日になったということでした。
このおふたりにお願いしたことで、「ミッションＮＯＰ」はその世界をさらに広げていったように、おかあさんには思えてなりませんでした。
（おわり）
「のんたんがアキコさんやトミヨシさんと遊んだ日のようす」は、とーたん日記でも見ることができます。
とーたん日記 １０．２００２年９月 笑顔がいっぱい
１０．７ アキコさんからのメール （2002年 9月29日）
１０．８ トミヨシさんからのメール （2002年10月13日）
アキコさんからのメール
ミッションＮＯＰ（のんたんおでかけプロジェクト）をやっていただいた夜、アキコさんからいただいたメールです。
【９月２９日】
こんばんは、アキコです。
今日は、のんたんのお相手をさせていただき、ありがとうございました。
今日のようすを一応ご報告しておきますね。
お母さんが行ってしまった後、
のんたんはジュースを飲むのを止めてベンチから立ち上がり、あたりを手探りで探し回り、
"本当にいなくなってしまったんだ" とわかった瞬間、寝転がって泣き出してしまいました。
起こすと、今度は柱に頭をがんがんぶつけようとし、全身で抵抗していました。
慌てて頭を抑え、抱きかかえてベンチに座り、
ジュースを飲ませたり、「さあ、電車に乗ろうねー」と声かけをしたりして、
なんとかあの手この手でなだめすかしていたのですが、
ようやく電車が来て、いざ乗ろうとしたら、
電車はなぜかとても込んでいて、座れそうになかったので見送りました。
のんたんは電車が来る音を聞いて、しばらくぴたっと泣き止み、じっと聞き入っていましたが、
電車が行ってしまうと "電車が来たのになぜ乗らないんだ？" とばかりに、
また火がついたように泣き出してしまいました。
次の電車がなかなか来なくて、その間、ずっと泣き通して、なんだか申し訳なかったです。
やっと次の電車が来て、後ろから２両目の長いイスの端っこがちょうど空いていたので、
そこに落ち着きました。
自分でさっさと靴を脱ぎ、リュックを下ろし、
はじめはイスの上に立って、窓にぺたっと張りついて音を楽しんでいたのですが、
そのうち、イスの端の３０センチくらいの棚（消火器が入っているところ）に気付き、
「階段！」と言ってそこに上り、
網棚の鉄棒に手を伸ばし、鉄棒のようにぶらさがってにこにこ顔。
途中からは、「タラララ〜♪」と聖者の行進を歌ったりして、
さっきまで泣いていたのが嘘のように、すっかりご機嫌になりました。
ぶら下がった瞬間、
「いーち、にーい、さーん・・・」
と数えてあげると、５数えたところで、
「タン！」
と言ってイスの上に降りては、
「もう１回！」
と言い、しばらく繰り返していました。
終点の上野に着き、
「のんたん、着いたよー。電車、降りようか」
と声をかけたのですが、
まだ降りたくなかったようで、ずっと鉄棒にぶら下がったりしていました。
車掌さんに聞いたら、また折り返して千葉方面に行くと言うので、
そのまま乗り続けました。
ちょうど上野に着いたところでやっとトミヨシくんと連絡が取れ、合流できました。
東中山で急行待ちのため、しばらく停車していたので、
「のんたん、降りようか？」
と声をかけると、素直に靴を履き始めたので、そこで降りました。
ところが、私も注意が足らず、片方の靴がきちんと履けていなかったことに気付かず、
降りるときに、右の靴がホームと電車の隙間から線路に落ちてしまいました。
のんたんは靴がなくなったことにすぐに気付き、ホームのベンチに座らせると、
靴がなくなった方の右足を叩いて、
「くつ〜！」
と訴えていました。
電車が行った後、駅員さんに靴を取ってもらい、それを履くと安心したようでした。
反対側のホームにうつるため、
「さあ、のんたん、階段昇るよー」
と声をかけると、泣き疲れたのか、
「抱っこ！」
と言って抱きついてきました。
「甘えんぼさん！」
と言うと、にやっと笑っていました。
とりあえず上りだけ抱っこして、
下りのときに「のんたん、階段降りようね」と下ろすと、
ぐずることはなく、素直に手すりにつかまりながら、
すたすたと降りてくれました。
すぐに上野行きの各停が来たので、それに乗りました。
上野でランチをして帰ってくるには時間が中途半端だったので、
堀切菖蒲園より手前で下車してご飯を食べるのがちょうどよいのかなーとも思ったのですが、
とても気持ち良さそうに電車にゆられているのんたんを見ると、
それも忍びなく思え、リュックに入っていたバナナを出して、
「のんたん、バナナ食べる？」
と聞くと、
「バナナ、食べる！」
と遊ぶのをやめ、イスにきちんと座ったので、バナナを食べてもらいました。
一口食べては遊び、また気がつくとちょこんと座って、
「バナナ、食べる！」
と言うのが、とてもかわいかったです。
バナナを食べると、満足したのかイスに横になり、
しばらくは首を振って電車の音を楽しんでいたようですが、
そのうち動かなくなってきたと思ったら、すやすやと寝息が・・・(笑)
たぶん、電車に乗るまでの約１５分間、私と格闘して泣き疲れたのだと思います。
じゃあ、このまま、また折り返して堀切菖蒲園に戻ろうか・・・と思っていたら、
上野に着く直前で目を覚ましたので、
「のんたん、もうすぐ着くよ。降りるよー。 靴、履いて」
と声をかけると、体を起こし、座って靴を履いたので、上野で降りました。
駅を出るとすぐにマックを見つけたので、そこを目指して歩きました。
トミヨシくんに注文の列に並んでもらい、先に３階に行ってソファの席に座りました。
パンケーキが来るまでの間、飽きてしまうと思い、
リュックの中にあったもう１本のジュースを出して、
「ジュース、飲む？」
と聞くと、
「ジュース、飲む！」
と言い、ストローを差す間ももどかしいと言った様子で、
私の手からジュースを奪い取るようにし、
ごくごくごくっと一気に飲んでしまいました。
よほど喉が渇いていたようです。
ジュースを飲んで少し満足したのか、
その後、注文の品が届くまでおとなしく座って待っていてくれました。
電車の中でバナナを食べたので、どうかな？と思ったのですが、
パンケーキを見事にたいらげ、オレンジジュースも飲み干してしまいました。
帰り際、マックのお姉さんが紙の帽子を持ってきてくれました。
"あー、のんたん、かぶりものキライなんだよなー。絶対、かぶらないだろうなー"
と思いつつ、試しに頭の上に乗せてみると、きょとんとしながらも両手で触って 、
"なんだー？ これは・・・"
としばらく観察していましたが、
気に入ったのかにこっとして、そのままかぶっていました。
おまけに、駅まで歩く間、帽子が頭から落ちないように、
私とつないだほうの手と反対の手で一生懸命押さえているではありませんか！！
事前に「のんたんメモ」を読んでしっかり予習してきたトミヨシくんも、
「あれ？ のんたんて、身につけるもの苦手なんじゃなかったっけ？」
とびっくり！
その姿を見て、なんだか私もうれしくなりました。
心なしか、その帽子のおかげで、帰りは足取りも軽く感じられました。
ときどき、
「のんたん、帽子かっこいいねー」
と言うと、にこっと笑っていました。
電車に乗ると、靴やリュック同様、その帽子も脱ぎ捨ててしまったのですが、
堀切菖蒲園で降りるとき、リュックを背負わせ、帽子を頭にかぶせると、
これまた片手で落ちないように押さえていたので、
よほど気に入ったのだと思いました。
朝、電車に乗るまではちょっとたいへんでしたが、
その後はとても楽しく過ごさせていただきました。ありがとうございます。
トミヨシくんも、今日は、会った瞬間、
「とーたんかなー？」
としばらく腕を触ったりにおいをかいだりして、のんたんがまとわりついてくれたので(笑)
うれしかったようです。
「のんたんて、美男子だよね！」などと言っていました。
長くなってしまいましたが、こんな一日でした。
次回は、最初からご機嫌で一緒に電車に乗れることを目標にしたいと思います。
では・・・
アキコさんからの詳細なレポートは、とてもうれしいものでしたが、その内容を見て、おかあさんは息を のむほどびっくりしました。
実は、おかあさんは、のんたんがこんなにも泣くところをあまり見たことがないのです。おかあさんの前では、 のんたんはいつもゴキゲンですし、ましてや、「火がついたように 泣いた」なんて、想像もつかないことでした（ちょっと見てみたい気もしますが…）。
こんなにも大泣きするほどのんたんにはつらいことだったのだと思うと、かわいそうな気 がしないでもありませんが、といって、いつも親ばかりが連れて歩く のがよいともおかあさんには思えません。
もしもアキコさんがつれだしてくださらなかったら、きっと、「帽子ののんたん」 も見られなかったことでしょう。 「親以外の方が遊んでくださることに、意味があるのだ。」と、おかあさんはそのときに思いました。
のんたんもいっしょに運動会に連れて行こうかどうかとぎりぎりまで迷った末の決断でしたが、 「やっぱりお願いしてよかったのだ。」とおかあさんは心からそう思いました。 おかあさんがアキコさんにお礼のメールを書いたところ、再び、アキコさんから、「追伸」のメールが届きました。そこには こう書いてありました。
【追伸】
もうひとつ、言い忘れていたことがありました。
堀切菖蒲園の駅でおかあさんとお別れしてから、のんたんがずっと泣いていたときのことです。
のんたんは、もらったジュースを少し飲んでは泣き、また少し飲んで泣き…、というのをしばらく繰り返したの ですが、そのとき、口から離したジュースを、必ず、私に手渡してから泣き始めるのです。
のんたんは、 おかあさんとお別れしてきっと悲しくてたまらなかったのでしょうが、でもあんなに大泣きしているときでも、けっして、ジュースのパクを 投げ捨てるようなことはしませんでした。
必ず、私の手を探し、私の手にジュースを手渡してから泣くのです。のんたん、えらいなあって思いました。
ほんとうに、ずいぶん成長しましたね。
（次回につづく）
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トミヨシさんからのメール
トミヨシさんとは、このときの「ミッションＮＯＰ」がはじめての出会いでした。
これを機に、今後ものんたんの遊び相手をお願いできないでしょうか、というおかあさんのお願いに対して、 トミヨシさんがくださったメールです。
こんなおにいさんと出会えたことの幸運を思わずにはいられないような、あたたかいメールです。
【１０月１３日】
初めまして、トミヨシです。
先月、アキコさんと一緒に、のんたんと遊ばせていただきました。
色々とお気遣いいただき、ありがとうございました。
さて。
のんたんとの今後のお付き合いに関してなのですが、
できる範囲でお手伝いさせていただければと思います。
ただ、色んな点に不安が残っているので、
当分は慣れた方と一緒にさせていただければ、と思っています。
しばらく悩みました。それはやはり不安があったからです。
成人の盲ろうの方との関わりはこれまでにもありましたが、
今回のんたんと一日接していて、
「子供との付き合い方」「コミュニケーションの不安」「安全への不安」
などに戸惑いました。
子供と接することさえ慣れてない僕が、今後どうお付き合いできるのか…。
ですが、電車で吊り輪を見つけたときの、のんたんのにやりとした表情や、
電車から降りるときの寂しそうな顔、
帽子をひしっと抱えて放さない満足げな顔などを見ていると、
何故か僕までニコニコしてしまうんですね。
戸惑うことも多いだろうけど、もう少しのんたんを見ていたいな。
毎日新しい発見をして、遊びを覚えて、いろんな人と話をして…。
そうやって成長していくのんたんの手助けをしてみたいな、と思いました。
今後どのような形でお付き合いできるかわかりませんが、
必要なときは声をかけていただければ嬉しいです。
アキコさんとトミヨシさん。このおふたりに囲まれて、のんたんはきっと楽しい一日を過ごしたことでしょう。
おかあさんがさらにうれしかったのは、アキコさんとトミヨシさんにとっても、思い出深い、楽しい一日になったということでした。
このおふたりにお願いしたことで、「ミッションＮＯＰ」はその世界をさらに広げていったように、おかあさんには思えてなりませんでした。
（おわり）
「のんたんがアキコさんやトミヨシさんと遊んだ日のようす」は、とーたん日記でも見ることができます。
とーたん日記 １０．２００２年９月 笑顔がいっぱい
